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「現代世相1分3分5分法話事例別集成」より [既刊紹介]

投稿日時:2014/03/31(月) 18:03

現代世相1分3分5分法話事例別集成」収載の法話例を1題。


「自分だけで育てたのではない」
 

先日、あるお母さんから手紙をいただきました。それは、自分の後悔を述べた手紙でした。ご許可を得て、少し紹介させていただきます。

 そのお母さんは、お子さんがまだ小さい頃、自分の不注意から大きな火傷を負わせてしまったのだそうです。二歳のときで、入院中は点滴を引き抜いて、抱きかかえたまま屋上から飛び降りてしまおうと思ったそうです。
入院は、何週間にもわたりました。お母さんは、「もしこの子が生きて役立つなら、この子を生かしてください」と祈ったそうです。一週間目に、尿が出てこの子は助かりました。しかし、大きくなっても、顔に赤いむらさきの火傷の跡が残ってしまいました。火傷のケロイドは、顔ばかりでなく、背中と腕、胸に残ってしまいました。

 でも、小、中、高校と、明るく元気に育ったそうです。しかし、当時はまだそういう火傷の跡を消す手術は高額で、なかなか手術で火傷の跡を消してあげることができなかったそうです。ですから、「お前は結婚できないかもしれないから、自分で生きるため早く手に職を持ってね」と言ったそうです。
自分でもむごい言葉だと思いながら、励ましの言葉として声をかけていました。お母さんが願ったとおり、この子は前向きに明るく生きてきました。自立できる職業ということで、彼女は看護師になることを決め、県立の看護大学に進学しました。それから二年後、彼女は卒業式の答辞を読むほどにがんばったそうで、卒業式にはお母さんも見守りに行ったそうです。

 このお母さんは、この子を自分で育てたと自慢していません。そのまま読ませていただきますが、「この子はもったいないくらいにすてきな方々にめぐり合ってくれました。この子を育てていただいた、多くの方に感謝します。決して自分がこの子を育てたとは思っていません。多くの方々に感謝します。」と、手紙は結ばれていました。

 道元禅師は、次のようにおしゃっています。  「わたくしどもが心から仏の慈悲を信じ、心からお任せすることによって、むこうから働きかけていただいて、そのまま随っていくことが、仏の弟子として生きることだ」と。

 お釈迦さまは、自分は何のために生まれたかを問い、自分自身がまわりに生かされた存在であることを再発見されました。みなさま方も、ご自分のお子さんを自分ひとりで育てているのではなく、さまざまな人たちに支えられ、子ども自身もさまざまな人と出会い成長していくものであることをあらためて確認していただき、明日からの子育ての指針にしていただきたいものです。

現代世相1分3分5分法話事例別集成
監修:谷玄昭 石上善應 宮田正勝 中野東禅 浜島典彦

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